歌集「調律花集」2014/01-

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2014年

中庸に 心をくだけ 花つぼみ 風の音する 立春の頃 1/24

降り積もり 降り残る雪 紅梅に 友を偲びて また降り積もり

世に絶えず 人掻き立てる 緊張音 不安定音 また変調音 3/14

白梅を あちらこちらと 舞うひばり 蜜を啄み  そよかぜまだか 3/18-,23

   平成26年6月9日(月)夜明け頃に
夜明け頃 ペンに手帳が 擦れていく かそけき音に 心添いつつ
ヤマアラシ 暖簾の下に 身を潜め 月の彼方に 人が去りゆく
頼りなく 遠のく人の 引く波を 古へ人は 歌で忍びし
六月に 咲くと聞いたが バンマツリ 葉は繁げ込むも 花は待てとや 6/9

珊瑚樹の 花降りくるや 雨上がり 6/10

葉から花 あれよという間の バンマツリ 華やかながら 清涼さ秘め 6/16

華やけき 香り夜に降る バンマツリ 感覚生き方 星の数ほど 6/23

我が家も 少し綺麗に 暮らしみよ 草木の緑 竹製の棚 6/23

深まりぬ  喪の返礼と 栗の花 6/28

できしより 願うことなお 多すぎて 今年も黒き 笹月きたれり 6/30(2015/04/04改)

戸を開けて 珊瑚樹の赤 溢れくる ツクツクボウシの 鳴き暮るる頃 8/26

後々の 歌託せらる 君あれば 願う我が身も 老い近づきぬ 8/30

空高く 推し量られる 君あれば この直感も 幸いなるらん 9/12-23

懐は 強固と思えど 我もまた 不器用抱え 過ぎ来しければ 9/25

薬切れ 眠れぬままの 秋の夜 我が身ひとつの 物理現象 9/25

みえぬもの  実在を追う 探偵と まぼろしの恐怖 闘う我と 10/16

輝ける 月と星座を 追い求め 錫杖の音 響き続ける 10/24

霜降りて 皺よる椿に 差しのべる ぬすびとの 手は柔らかき 10/28

黒のみで 埋もれる手帳 大人びて 時節は多彩に パーソナライズ 11/3

黒スーツ 髪束ねたる 女子社員 颯爽として 秋風の吹く 11/4

店先に アメリカンドッグ 残りおり 大灯台に 遊びしあの頃 11/5

琵琶の音に 相聞絶えぬ 気配する 黒漆色に 君進みゆく 11/7

腕萎えて 一度はペンと 決めたはず ガットギターで 喚び戻す秋 11/8

秋深く食器の棚に光さす食べる人亡き隙間の奥に 11/17

絹かかる空の眩しき日の光風を感じて人走り去る  11/17

秋風の路地陰低く柘榴なる枝振りに合うその実の小ささ 11/18

秋の風小さき柘榴の実るなり人の通れる路地の木陰に 11/18

葱の芽が伸びる生命(いのち)の不安満ちて仏の掌にぞ安み入るかも 12/1

プラタナスがらんばさりと降り散りぬ地球がひとつ宇宙に浮かぶ 11/18,12/1,12/12

もみじ葉彩り匂う時の織(おり)紡ぎてうたふ世の命をぞ 12/9-12

おぼろなる空に月照る十三夜過ぎ越し時を映してやまず 12/9

花園や色紙貼れる教室がそのまま過ぎる眠りのなかでは 12/29-31

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2015年

六日朝正月の菊開ききる静けき普段の日々の始まり 1/6-11

年礼の声みな早口で繰り返す普段の知人も能面と化す 1/10,11

血圧の下が高いと言いおきし母と同じく五十路過ぎぬ 1/10,11

不器用はお互い様の君だけは気配感じる幼き我も 1/18-20

籠車散歩の児らはみな眠り空行く風に梅やほころぶ 1/20-29

  整形外科病棟にて
ほの重く雪の夜過ぎて多摩丘陵身体を治す時を過ごさむ 2/6
病室は寒かでんよか独り言九州弁で心強くす 2/9
病棟は過去と未来が見え隠れ野生の鳥が空高くゆく 2/14
病院の真直ぐな廊下漕ぎ行けば窓には椿の小高く咲きぬ 2/13
病院は子ども大人の声交じりみな快復と春を待つなり 2/13
春青く羽根ペンのごと雲浮かぶ野生の烏がひととき過ぎぬ 2/21
春の雨ひと粒ずつが愛おしき立ち見る視線しばしの別れ 2/26
鶯が雨に跳ね跳ぶ草の丘明日は手術の病室の窓 2/26
五十路して月のうさぎが飛び入りぬ春まだ遠き奥多摩の丘 3/4
山の道砂ふぶく道橋の道真直ぐな道は幸いなるかな 3/6
十年(ととせ)振り同室の友と再会す互いに過去の入れ替わるごと 3/6
雲間より差し込む朝日の清らかき思考と工夫が続く毎日 3/10
春の陽に黄なる柳花そわそわと奏でる夢は吹雪いて止まず 3/11,3/29
退院に人影映り電線を入れ替えらむか一期一会と 3/13,3/29

試みにジャズアルバムを二つ聴き易き一つは物足りなくて 3/29

先つ君愛もて夢ぞ溢れくる夜桜はなお美しかりし 3/31,4/4

何事か我が身も役に立ち得るか問うている間も花散らしの雨 3/31,4/4

花曇り今夜は皆既月食といわるも急ぎ言葉とどむる 4/4

ひとつなる人智及ばぬ存在の中に溶け浮く花水木の赤 4/21,23

もみじ萌え桜葉輝く初夏の風互いに鳴り合う存在施を聞く 5/5-6

薄茶色羽根を揺らして行く羽アリ嵐来る前に巣を掘っておけ 5/12

花曇り今夜は皆既月食といわるも急ぎ原稿を書く 4/4

先つ君愛もて夢を彩りぬ夜桜はなお美しかりき 3/31,4/4

何事か我が身も役に立ち得るか問うている間も花散らしの雨 3/31,4/4

三度四度三度四度に鳴くカラス幾度も鳴いてそはカラス語か 6/4

空一色水一色に漂いてすべて為るなり丸窓ひとつ 7/9

来年の手帳の知らせ来ししかど夏の盛りや言葉の停滞 8/12

野の花の多くの縁を過ぎ越して行脚となりぬこの世の旅は 8/16

美しき夢を湛える君ゆえに秋の虚空に舞い続けよ鷹 8/20,10/13
うつせみの生命(いのち)繋げて街中を行き来する人ともに親しく 8/21
吹きすさぶ紅の空バラひとつ温かき手の母の思いも 8/21,11/12
すずらんも花散るときのひとひらに耳かたむけむ微かなりとも 8/21
漠然とあるべき姿待ち果てて杜の都や夏のかぎろひ 8/12

高温のあまりに猛き夏過ぎて木々の緑が雨に映え染む 9/10

涼やかに葉も濃くなりやバンマツリ猛き暑さも過ぎいきししに 8/27

人知れずマグマの龍が地の底を蠢く国のもとに生まれし 9/14

秋一人髪さやがせてどっぷりと真赤な椅子に座りいるかも 9/16

秋の日の静かさに舞うシジミ蝶在り様近き露草に寄す 9/23

希望をや薄雲のなか虹纏うスーパームーンの夜は静けき 9/28

琵琶の音を掻き分け聴きぬ神無月世は喧騒に軽く過ぎ行く 10/5

残り葉に恋に久しき吾も風に軽くそよけくボブショート想う 10/18

柿色に暮れゆく空と黒き森今も静かに時は過ぎゆく 11/3

セメントの巨大な建物多き街力のみ見る今のこの國 11/12

冬の陽や街に紅葉が映えて照るこれより年賀の葉書を買いに 12/15

世の中が静まり行かん梅が枝に蕾芽生えてふくらむを期す 12/16

津軽出の叔母は苹果を一袋口べたなりの心なるかな 12/20,28

2016年

初春や世は平らかに健やかに移ろいゆくも星の瞬き 1/1

桜花草書のごとき息遣い君を思いて悔いなく過ごさむ 3/16,17

手術入院
手術すぐ記憶おぼろげ目眩して幻覚の故に無眼耳鼻舌心意
牛乳を口に含みてまだこの世彼岸とはかく至るかな 4/7
過ぎ越しし心の凝りと見ゆるかも灰色の雪とはこんな感じか
日々が過ぎつつじふくらむ窓のそと空(くうの中を空一歩ずつ 4/14

桜桃のその種苦く実は甘く去りゆく人と巡り逢う人 7/10-15

 炎天下葉の繁くある桜道白き切り株ひこばえふたつ  8/16-17

 花売り場ホオズキ一本残りおり嗜み方もいつしか忘れ 8/16-17

 幾日か咲き残りたる菊の花深く静かに一日(ひとひ)暮れゆく 9/3

 絹の糸 なお繋がりぬ ひたすらに まんざらでもなく 秋の夜の月 11/12-16

 霜月や 雪の白さに 街眠る 11/28-29

 秒針や 逢いたい人ほど 擦れ違い 触れては融ける 六花水晶 11/28-12/1

2017年

 はつはるや 縁を紡ぐ 紙の鶴 君に送らむ 扇に載せて (年賀)

 あれこれと 思い返さる 甘酒を まるで明日が 最期のごとく 7/23

 生き急ぎ死に急ぎても星雲の端なる星のただのひととき 11/5

 思い出はほぼ家族のみ海平線ベイブリッジに埋め尽くされぬ 12/21

2018年

 遠き友行き方激しく追いつかず逝きしもなお我おぼつかず 12/10

2019年

 曇り空さくらかえでの木の根元南無阿弥陀仏の雪の華めく 1/12

 新しきアルバムの歌あれこれとトパーズ色に煌く春空 4/8

 花ふぶき歌と友した半生を何者ならず納得しつつ 4/13

 萎えてきて穏やかな日は満ち眠る我が身に収む曼珠沙華紅 10/10

 朝早く目覚めて開く画面にて我が内に在る恋物語 10/11

2020年

 筆進む星の世界の物語 年重ねては心のままに 2020年賀状

 コンビニのすき焼きうどんに母思う ささやかながら初詣の日に 1/3

 富士の影西に映して初茜 空には明星とんとん暮るる 1/3

 我が星座宵の明星囲むらし 正月三日のひとりの部屋で 1/3

 年頭に読み続けるは「ブッダ伝」作品の為また後の為 1/3

 今の世は行間の妙なかりけり歌にもまほし文学性を 1/27

 人の世を責め立て降るや槍の雪サクラ少なき弥生土曜日 3/14

 現代の説話を編みて二年過ぎ更に増えるる患いなれど 3/14

 ゴキブリがカップの縁乗り水を飲むそれほど酷なこの地球(ほし)の夏 6/16

 手が出せぬ昆虫嫌いの吾の前ゴキブリさえもが猫めきて呑む 6/16

 水無月という名の菓子は清々し夏来る前の予感の味か 6/30

 何事も無く過ぎ去りぬ蒼天の梅の枝に蕾探して 1/19

2021年

 眩しさや桜の花の香り満つ隣町まで食パン買いに 3/20

 想い出は風景のみにて沈丁花されども胸は締め付けられて 3/20

 倒れれば何とて動けぬ我が身にて作家の意地は署名の手書き 3/20

 不便なるこの身になりて二十年ひとり暮らしを続けていこう 3/20

 老いるとは 様々なりし 我が身とて いつの間にやら 朝早く起く 5/14

 幼稚園 祭り囃子の聞こえ来る 6/26

2022年

 梅雨ふかし幻日環の彩りは時を待たずに消えゆくものか 6/21

 晴天に咲き残りけり百日紅行き交う人々みな無口なり 9/6

 古民家は更地へ白き彼岸花 10/1

  喪失も時が薄むる虚しさに三叉路過ぎし来し方見つる   11/21

  冬晴れや線路脇そば鳩啄みぬ 12/15

  招き猫柄の電車はボロ市へ 12/15

 落葉期つわぶき伸びるホーム下 03/11 (俳句ポスト投稿句)

 「単品で」オーダー久し冬日和 12/17

 童(わらべ)めく還暦なれど冬至の湯 12/21

 松ぼくり光る街場のクリスマス 12/21

 来年の俳句手帳に冬夕焼 12/25

 冬の空高く仰ぎて深き青 12/30

 買い物は賑やかなりて小晦日 12/30

 

2023年

 ネットにて縁ありと買う寺守り 1/1

 近況を知らすは四人年賀状 1/1

 おせちセット分け食むはずの一人前 1/1

 寒椿サロペットの子が走る道 1/3

 正三日車道に列なる地元宮(ぐう) 1/3

 白梅の二つ三つなる詣(も)で帰り 01/03

 若者へ平和を託す寒卵 01/07 (俳句ポスト投稿句)

 社会主義の亡霊残る冬芒 01/07

 干し柿の甘さや口に残したき 01/16

 鳶が二羽ゆうゆう円描く曇り空  01/17

 温もりや優しく耳が近づきし会話に慣れぬ我が無器用さ 01/19

 冬曇り夜は妖しき繁華街 01/19

 「テオリア」の名残わが家の湯たんぽ 01/19

 行く道を照らしておくれ白梅よ 02/07

 春立ちてあの飛び梅は健在か 02/07

 理不尽が溢るる世界白き梅 02/07

 春の朝ぬくくなりたる空気の香 02/17

 恋の無き年月よ鳥雲に入る 02/09

 鳥雲に入る幼馴染みの老夫妻 02/09

 花冷や血圧測る歳の吾 03/11

 花冷や引越業者の大型車 3/11 03/11

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